あなたは「パウダー」と聞いて、何を思い浮かべますか?
スキーに精通しているあなたはきっと「パウダーと言ったらスキーでしょ!」と考えていることでしょう。少なくとも「粉末」とは考えていないはずです。
スキーにおけるパウダーとは、サラサラの粉雪を意味しており、雪が降った後にふかふかの雪が積もっているゲレンデを「非圧雪エリア」と呼んでいます。
なんといっても、圧雪車で雪を押しつぶして滑りやすくした「グルーミングバーン」では味わえない、浮いているような滑り心地と非日常感が魅力です!
僕も10年以上スキーにドはまりしていますが、二郎系と同じでたまに無性に滑りたくなるんですよね…。ふかふかの雪を舞い散らせながら滑り降りる爽快感と言ったら…!
そんなパウダー好きのスキーヤーが非圧雪コースの滑り方を解説いたします。
【この記事でわかること】
①パウダーに適したスキー板
②非圧雪コースを上手く滑るコツ
③転んだ時の脱出方法
目次
スキー板によるパウダー特性の違い
まず初めに、この世界には滑り方の違いに合わせた、さまざまな種類のスキー板があります。
家族や友達と一緒に滑っている方なら基礎(デモ)用の板を使っているはずです。
具体的には、長さが150~170cmくらいで結構重量があります。形状は、トップが丸く中央部は若干細くなっており、裏面を見てみると、両端に金属のエッジがついています。このスキーはどちらかというと整地された綺麗な斜面を滑るのに適しており、エッジを立てながらカービングで滑っていくと爽快感を得られます。
逆に、非圧雪エリアを滑るのに適した板もあります。その名も「ファットスキー」。
読んで字のごとく太いスキー板です。基礎スキー用の板のように、中央が細くなっていません。基礎スキー板が「ボン・キュッ・ボン」だとすると、ファットスキーは「ボン・ボン・ボン」です。長さも180cmくらいあるため板自体の面積は広いのですが、持ってみると意外と軽いのに驚くと思います。そして見た目が派手な板が多いです。
実際に滑ったときの違いとしては、ひたすら浮遊感がすごい!たとえるなら「サーフィン」をしているような感じで、雪に乗っていくような浮遊感を味わえます。
太さ(センター幅) | 重量 | 浮力 | 圧雪 アイスバーン | 非圧雪 | |
基礎スキー | 細い(~80mm) | 重い | 小さい | ◎ | 〇 |
ファットスキー | 太い(120mm~) | 軽い | 大きい | △ | ◎ |
ここまでをまとめると、非圧雪に向いているのは間違いなくファットスキーです。1台持っておこうかなーという方は探してみてください。
とはいえ、ファットスキーを別途買うのも出費がかさむし通常のゲレンデを滑る分にはやはり基礎スキーの方が楽しいです。そこで、普通の基礎用の板でパウダーを滑るためのコツをお教えいたします。
非圧雪エリアの滑り方 4つのコツ
ひとまずこれだけ覚えとけ!という最重要事項を4つご紹介いたします。不整地やバックカントリーデビューの基準としては、スキー検定2級以上のスキルは欲しいかな~とは思います。一応、ちょいちょい細かいテクニックが必要になってくるので。ポイントは大きく分けて3つあります。
①思いっきり後傾で滑れ!
一番大事なポイントです。非圧雪エリアでは、重心を後ろに持っていきましょう。圧雪されたバーンでは、ポジションが後ろに寄ることを「後傾」と呼び、良くない滑り方とされていますが、非圧雪エリアでは後傾が絶対的な正義なんです。
なぜ後傾が良いのか?それは、浮力を得るために必要だからです。
ファットスキーと違い、通常の板は面積が少ないため浮力を得にくい。そこで、「自分から浮かせていく」テクニックが必要になります。
イメージとしては「ドルフィンターン」のように、「体重を後ろに寄せることでスキートップを雪の上に出す⇒スキーの面を使って新雪を潰しながら(押し固めながら)滑る⇒埋まってきたらまたトップを雪の上に出す」を繰り返します。なので非圧雪ゾーンでは、後傾を意識して板を出しながら滑る意識を持ちましょう。
後傾なので、荷重点としてはかかと。かかとで操作するイメージで滑りましょう。
②両足を閉じて同調させろ!スキーは体の近く。
非圧雪の中では、両足がばらけた時点で「おしまい」だと思ってください。
滑っている中で両スキーの向き・方向が若干ずれたとしましょう。そうすると、スキーはひたすら別々の方向に向かっていきます。こうなってしまうと、もう転んで止まるしかないんですね。でないと股が裂けます。
僕も最初にチャレンジしたときは、本当に何度も股が裂けそうになりました…。はい。それはもうめちゃめちゃ痛かったです。
新雪はサーフィンだと言いましたが、両スキーセットで1枚のスノーボードだと考えましょう。つまり1枚の板に乗っているイメージで、体から板を離しすぎないように注意して滑りましょう。
「両足合体&体の近くに置く」意識がしっかりイメージ出来ていれば、当然両足の動きが同調します。スキーがばらばらの方向を向くことがなくなり、転倒防止につながります。
サーフィンと同じという意味でもう1つ!手はいつもより前に出しておきましょう。かかと荷重によって後ろ寄りになっているバランスを保つ意味で大事です。
大事なことなのでもう1度言いますが、両足がばらけた時点でおしまいです!
③無理なエッジングは禁止!
いつも整地で滑っているスキーヤーにはこれをマスターするのが一番難しいかもしれません。
いつもは力強いエッジングで思い通りにターンを繰り返しているかと思いますが、非圧雪バーンでのエッジングは無意味です。
ターンするコツは、小回りの場合、スキーが雪上に浮いて出てきたときにクルっと回すイメージです。ドルフィンターンで言うと、雪上に浮き上がってきたタイミングで「クルッ!」1回沈みこんでまた先端が浮いてきたタイミングで「クルッ!」という流れです。上体はずーっとフォールライン(落下する方向)を向いておくことが大事。
そして、大回りの場合、 滑る際は基本的には「外足荷重」を意識しましょう。 外足から外足へと荷重ポイントが移るイメージです。
た・だ・し!雪が深くて重い時は両足同調でドルフィンターンのようにジャンプしながら滑るときれいにターン出来ます。重い雪の場合、ターンを意識してから1mくらい先で曲がってくるので、じっくり面で加重してゆったり曲がる意識を持ちましょう。
この際、「自分から操作する」よりは、「サーフィン」のようにひたすら流れに乗って行くような意識を持ってください。
非圧雪エリアで転んだら大変!脱出方法
新雪で一番恐ろしいのは、転ぶと起き上がるのに時間がかかること。
僕も苗場スキー場の非圧雪ゾーンの新雪にはまり10分以上起き上がれなくなったことがあります。「あーここで死ぬのかあ。雪解けしたらちゃんと回収してくれるかな…。」とか考えてました。
実際、大雪の翌日なんかは、腰より上まで雪が来ることもザラにあります。そんな中で転倒すると必ず深く埋もれます。例えるなら、ビーチで砂に埋められるのと同じくらい脱出困難です。ひたすら底なし沼状態。初めての場合100%パニックになりますが、できるだけ慌てずに行動すること!が大前提です。
脱出のコツ1:できるだけ、仰向けで転ぶように!
うつ伏せで沈み込むと、スキーのトップが地面に突き刺さっているため、自力で起き上がるのが困難かつ、顔まで埋まると窒息の恐れもあります。ここまで読んできた皆さんならきっと後傾で滑ってくれると思うので、基本的には仰向けで転べるかと思います。
脱出のコツ2:足場を作ろう
立ち上がるには足場がないと厳しいです。まずはスキーを履いたままで足元の新雪を下方向にギュッギュッと押して雪を固めたら慌てずにゆっくり立ち上がってみましょう。
このとき、手ではなく、リーチの長いストックを突いて立ち上がると比較的楽に立ち上がれます。
脱出のコツ3:後傾で漕ぎ出そう
後傾の姿勢で前方へ小刻みに歩くorストックを深く突きながら進んでいくと、トップが浮いて雪上に浮かび上がるタイミングが来ます。そのまま滑って行けばOKです。
立ち上がったらとにかくスキーのトップを浮かせることが大事!
まとめ
パウダーは整地とは全く違うということを覚えておいてください。
普段の感覚で滑ると必ず転んでスキーが外れてスキー板行方不明事件が起こります。
「体の緊張をほぐして無理な動きをせず脚を閉じたまま左右同調させて後傾で滑る。」これが出来れば攻略したも同然です。雪が降ったらさっそくゲレンデでチャレンジしてみましょう。